Schema Theory スキーマ理論

  • リーディング・コンプリヘンションは、読み手がテクスト(text)の活字から受動的に意味を汲み取る行為ではなく、スキーマ(Schema)と呼ばれる読み手の持つ先行知識(prior knowledge)とテクストの間の相互作用によって内容を再構築するプロセスとみる理論。
  • 各個人の雑多な知識や経験はスキーマと呼ばれる数多くの構造的知識として認識されており、スキーマは記憶の呼び出し、判断、理解等あらゆる認知活動にも関与する。
  • スキーマ理論からみる読解は次のようなプロセスであると考えられる。
    1. 読み手はテクストに含まれる何らかの鍵(cue)を基に、自分のスキーマから最も適切なものを呼び出し、テクストの内容を再構築(reconstruction)する。この再構築した内容とテクストの与える情報が合致すれば理解(comprehension)の状態に達したことになる。
    2. しかし読み手にテクスト理解に必要なスキーマが無かったり、間違ったスキーマを呼び出すと、理解できなかったり、書き手の意図とは違った解釈をすることになる。
    3. スキーマは一部修正したり、古いスキーマを基に新しいスキーマを創り出したりして増殖していく。
  • スキーマの範疇は、一般的に社会的、文化的題材に関する内容スキーマ(content schema)と、テクストの構成や言語的なことに関する形式スキーマ(formal schema)の2つに分けられる。
  • スキーマ理論を利用した最も効果的なリーディングの指導法はアメリカの小学校で行われているDRTA(The Directed Reading-Thinking Activities)であろう。
  • この活動は教師の指示によって生徒が〔ストーリーの予測〕〔黙読〕〔予測を証明する〕という一連の読書活動である。この一連の指導において教師は生徒に"What do you think will happen?" "Why do you think so?" "How can you prove it?" などの質問を与え、読書の方向付けをさせる。
  • このような読み方をすることによって、以下のような効果が期待できる。
    1. 受動的は読みではなく、自分のスキーマを基に予測を中心とした能動的な読み方をする。
    2. ストーリー全体の流れに焦点を当てた読み方をする。
    3. 予測を証明するためにテクストの構成について、分析、総合的な読み方をする。
    4. ストーリーの重要事項が長期記憶事項として読者の記憶に残る。
  • スキーマ理論は今後英語の読解指導のみならず、聴解指導、国語の読解指導等、外国語、母国語を問わず、内容理解を中心とした言語活動に応用できると考えられる。