『ラウンド制指導法』 鈴木寿一
生徒の英語力を伸ばす方法
- 言語処理スピードを伸ばす:特に単語認知速度(意味・発音・他の単語とのつながり方など)。
- 学習したことを使って、理解したり(リーディング・リスニング)、発表したり(スピーキング・ライティング)する機会を与える。
- 日にちを空けて、大量で、多様な反復練習による語彙文法を内在化させる。
生徒の英語力を伸ばす授業
- インプット・・・繰り返しリスニングとリーディングにより概要→要点→細部の順に理解。ポーズやスラッシュを利用。
- インテイク・・・語彙・文法の内在化。大量で多様な音読練習。
- アウトプット1・・・空所補充(自分で埋めさせる+リスニングで確認)。英問英答(教科書を閉じて行う)。空所補充形式のサマリー(教科書を閉じて行う)。
- アウトプット2・・・サマリー作成。自分の意見をまとめて書く。書いた物を見ないで、スピーチ、ロールプレー、ディスカッションなどを行う。
指導上、役に立つ知識
- 簡易アナライザー・・・教科書など、表裏のわかるものを生徒に向けさせて、生徒全員の反応を見る。
- 英文における音節数・・・7音節で、生徒の理解がもっとも高まる。
- ポーズの長さ・・・1.2秒で、生徒の理解と記憶の定着がもっとも高まる。スラッシュやポーズ入りの英文を長期間読ませることは、英文の理解力の向上につながる(ノーマルポーズのほうが結果が劣る)。
- スラッシュリーディング・・・フレーズ間の意味関係を生徒に考えさせることが大事。失敗例として多いのは、フレーズの意味しか生徒に考えさせないような授業。
- 英問英答・・・テキストを開けたままするとコロケーションから答えを導いてしまうので無意味。テキストは閉じて行う。
- Read and look-up・・・10音節を超える文を覚えるのに有効
- 英語表現の定着には、間隔を置いた数回の復習が必要。
- 暗記前に2〜5分の音読を行うと、直後の記憶力が20パーセント向上する。
- 大量音読指導は、リスニング力・リーディングスピードを向上させる。センター試験や記述式テストの対策としても、効果がある。
- 音読の後に、英語でサマリーを作成させたり、内容について自分の考えをまとめさせると、TOEICのスコアが上昇した。
- 語彙指導・・・予習における単語調べや単語集利用は無意味。英文を理解する過程を通して語彙を学ばせる。単語を覚えるヒマがあれば英文をしっかり読みこむべき。どうしても単語帳がやりたければ、3年の夏に短期集中で覚えるべき。
- 予習・・・自分で音読化できない、戻り読みなどの悪癖がついてしまう。それよりは徹底的に復習させる方が効果的。
- 教材のレベル・・・自分で読んで6割くらいの理解がえられるもの。生徒の学力に合った教材を選択することが必要。
英文の内容に関する設問の種類
- 事実を問うもの
- 概要を問うもの
- 要点を問うもの
- 細部を問うもの
- 推測を要するもの
- 自分の意見を求めるもの
- 言語形式に注意を向ける質問:同意表現や反意語。なぜ他の表現ではなく、その表現が用いられているのか?
- 質問の形式
英語による質問 | 英語による答え | |
---|---|---|
和問英答 | 難しい | 難しい |
英問英答 | 易しい | 易しい |
和問和答 | 易しい | 難しい |
和問英答 | 難しい | 易しい |
ラウンド制指導法 手順例
1〜3ラウンド・・・インプット=英文の内容理解
4〜6ラウンド・・・インテイク=文構造の理解と音読練習
- 第4ラウンド:文構造と言語材料の説明と理解
- 【活動】TF Quizを行うことを予告して、内容を思い出させながら、朗読をペースメーカーにして英文を黙読させる。TF Quizの答え合わせ。生徒が理解できていない箇所の文構造説明。説明したものを、徹底的に音読させる。語彙の発展学習。指示語の確認。
- 第5ラウンド:音読による内容理解と言語材料の内在化
- 【活動】音読練習の後、英問英答。さらに音読練習。
- 第6ラウンド:和訳と音読による言語材料の内在化
- 【活動】発展的音読練習(パラレルやシャドーイング)、必要な箇所の和訳(予習させる)。和訳した英文を徹底的に音読させる。
7〜9・・・アウトプット=リプロダクションからコミュニケーション活動へ
- 第7ラウンド:音読による言語材料の内在化とリプロダクション
- 【活動】発展的音読練習。穴抜き英文を音読させる。英問英答(教科書を閉じて)。
- 第8ラウンド:復習
- 【活動】発展的音読。要約文を書かせる。
- 第9ラウンド:コミュニケーション活動
- 【活動】オーラルインタープリテーション。ダイアローグ化。ドラマ化。ダイアローグ・ドラマを書き下し文に書かせる。続きを書かせる。自分の意見を書かせる。